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宵の間にさても寝ぬべき月ならば
山の端近きものは思はじ

歌の意味
宵のうちに、それで寝てしまってよい月であるなら、山の端に近づくのを気にして物思いなどしまい。
鑑賞
巻第四 秋歌上 416

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 月が沈むのを惜しむ心を詠む。原文では詞書が改めて記されていない。
 作者の式子内親王は後白河天皇の皇女で、賀茂斎院を務めた。本巻では第三百八十首に続く六度目の登場となる。
 場面は秋の夜、場所は特定されない。
 詠まれた直接の契機は伝わらない。

 初句「宵の間に」は宵のうちに、の意である。第四百十四首の道因歌でも用いられた語である。
 二句「さても寝ぬべき」の「さても」は、それで、そのままで、の意である。「べし」は当然を表し、寝てしまってよい、の意になる。第四百八首の和泉式部歌が「月見て寝ぬべき心地こそせね」と詠んだのと同じ観念であり、二首が同じ理屈を扱っている。
 三句「月ならば」は仮定条件である。
 四句「山の端近き」は、月が山の端に近づいている、の意である。沈むのが間近であることが示される。
 結句「ものは思はじ」の「じ」は打消意志の助動詞である。もし惜しむ必要のない月なら物思いはしまい、という反実の言い方であり、実際には沈むのが惜しくて眠れないことになる。仮定を立てて現実を裏から示す構成である。

よひのま:宵のうち
さても:それで。そのままで
やまのは:山の稜線。山と空との境
作者
式子内親王
出典
新古今和歌集
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