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さむしろや待つ夜の秋の風ふけて
月をかたしく宇治の橋姫

歌の意味
さむしろの上で、人を待つ夜の秋風も更けて、月の光を片敷いて独り寝する、宇治の橋姫よ。
鑑賞
巻第四 秋歌上 420

詞書は前の歌に続き「家に月五十首歌」
 月の一連の中で、古歌を本歌として独り寝を詠む。原文では詞書が改めて記されていない。
 作者の「定家朝臣」は藤原定家である。藤原俊成の子で、『新古今和歌集』の撰者の一人である。本巻では第三百六十三首に続く二度目の登場となる。
 場面は秋の夜、場所は山城国の宇治である。宇治の橋姫は宇治橋を守るとされた女神で、独り寝の女の姿として詠まれてきた。
 直接の契機は五十首歌の詠出である。
 本歌は『古今和歌集』恋四の「さむしろに衣かたしき今宵もや我を待つらむ宇治の橋姫」である。
 この歌は定家の代表作の一つとして広く知られる。

 初句「さむしろや」の「さむしろ」は狭い筵、粗末な敷物をいう。本歌の初句をそのまま用いた部分である。「や」は詠嘆の間投助詞である。
 二句「待つ夜の秋の」は、人を待つ夜の、の意である。本歌の「今宵もや我を待つらむ」を受ける。
 三句「風ふけて」は、風とともに夜が更けて、の意である。本歌にない要素であり、ここで秋の夜の景が加えられる。
 四句「月をかたしく」の「かたしく」は衣の片袖を敷いて独り寝することをいい、巻第三の第百九十七首の経信歌でも用いられた語である。本歌では「衣かたしき」であったが、この歌では衣が月に置き換えられている。敷くものが布から光へ変わることで、寒々とした独り寝の姿が一層際立つ。
 結句「宇治の橋姫」は体言止めで、本歌の結句をそのまま用いる。初句と結句を本歌から取り、中の三句に秋の夜と月を入れて作り替える構成であり、本歌取りの手本として後世に重んじられた。

さむしろ:狭い筵。粗末な敷物
かたしく:衣の片袖を敷いて独り寝する
はしひめ:橋を守るとされた女神
作者
藤原定家
出典
新古今和歌集
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