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風わたる山田の庵をもる月や
穂波に結ぶ氷なるらん

歌の意味
風の渡る山田の庵に漏れ入る月の光は、稲の穂波に結ぶ氷なのだろうか。
鑑賞
巻第四 秋歌上 426

詞書「元久元年八月十五夜、和歌所にて田家見月といふ事を」
 ここから田の庵で月を見る歌が続く。詞書の「田家見月」は、田の家で月を見る、の意である。元久元年八月十五夜の和歌所での催しに出された歌である。
 作者は「前太政大臣」とのみ記され、誰を指すかについて定説を見ない。「前太政大臣」は太政大臣を辞した者に対する呼称である。本巻では第二百十一首
第二百七十六首でも同じ表記が用いられている。
 場面は八月十五夜、場所は山あいの田の庵である。
 直接の契機は和歌所の催しへの出詠である。
 田の庵は収穫前の田を守るために設けられる粗末な小屋で、そこに寝泊まりして鳥獣を追った。

 初句「風わたる」は風が吹き渡る、の意である。第三百七十七首の有家歌でも用いられた語である。
 二句「山田の庵を」で場所が定まる。
 三句「もる月や」の「もる」は、光が漏れる意と、田を守る意との掛詞である。庵は田を守るための小屋であり、その屋根から月が漏れる。二つの意が同じ場所で重なる。「や」は疑問の係助詞で、結句の「らん」に係る。
 四句「穂波に結ぶ」の「穂波」は稲の穂が波のように揺れるさまをいう。「結ぶ」は氷が張る意である。
 結句「氷なるらん」は、氷なのだろうか、の意である。月光の白さを氷と見立てる形であり、本集でくり返される、白いものを別の白いものと取り違える型である。

たのいほ:田を守るために設ける粗末な小屋
もる:光が漏れる意と、田を守る意を掛ける
ほなみ:稲の穂が波のように揺れるさま
作者
前太政大臣
出典
新古今和歌集
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