あくがれて寝ぬ夜の塵の積もるまで
月にはらはぬ床のさむしろ
- 歌の意味
-
心がさまよい出て眠らない夜の塵が積もるまで、月の光に払われることもない、床のさむしろよ。
- 鑑賞
-
巻第四 秋歌上 429
詞書「題しらず」
田の庵の一連を受け、眠らない夜の寝床を詠む。原文では作者名が改めて記されておらず、前の歌と同じ作者が続くことを示している。
作者は前歌に続いて藤原俊成女である。
場面は秋の夜、場所は寝所である。
詠まれた直接の契機は伝わらない。
初句「あくがれて」の「あくがる」は心が身を離れてさまよい出る意である。巻第一の第八十一首の貫之歌、本巻の第四百六首の道済歌でも用いられた語である。
二句「寝ぬ夜の塵の」は、眠らない夜に積もる塵、の意である。使われない寝床に塵が積もることになる。
三句「積もるまで」は程度を表す。塵が積もるほど長いあいだ眠っていないことが示される。
四句「月にはらはぬ」は、月の光にも払われない、の意である。月光が床に差し込めば塵が見えるはずだが、それさえないという読みと、月光では塵は払えないという読みとが成り立つ。
結句「床のさむしろ」は体言止めである。「さむしろ」は狭い筵、粗末な敷物をいい、第四百二十首の定家歌でも用いられた語である。そちらは待つ女の独り寝であり、こちらは眠らぬ夜の寝床であって、同じ語が別の場面で用いられている。
あくがる:心が身を離れてさまよい出る
ちり:塵。ほこり
さむしろ:狭い筵。粗末な敷物
- 作者
-
藤原俊成女
- 出典
-
新古今和歌集
- その他の歌
-