山おろしに鹿の音高く聞こゆなり
尾上の月にさ夜や更けぬる
- 歌の意味
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山から吹き下ろす風に乗って、鹿の声が高く聞こえてくる。尾上に月がかかり、夜はすっかり更けたのだろうか。
- 鑑賞
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巻第五 秋歌下 438
詞書「百首歌奉りし時」
鹿を詠む一連の二首目である。山おろしに乗って鹿の声が高く聞こえ、尾上の月を見て夜の更けたことを推し量る。詞書によれば、百首歌の中の一首として詠まれた。
作者は内大臣三条公教の三男で、正二位左大臣に至り、のち出家して三条入道左府と号した。日記『愚昧記』を残した。
場面は秋の夜更け、場所は鹿の声が風に運ばれてくる、月のかかる山である。
直接の契機は、正治二年(1200)に後鳥羽院が歌人たちに百首歌を召した、正治初度百首への詠進である。
初句「山おろしに」は、山から吹き下ろす風に乗って、の意である。六音の字余りとなっている。
二句「鹿の音高く」の「音」は、鹿の鳴く声である。風に運ばれて、声が高く響くさまを示す。
三句「聞こゆなり」の「なり」は、音にもとづく推定の助動詞である。姿は見えず、声だけが届いていることが表される。
四句「尾上の月に」で、視線は声の聞こえる峰の上へ上がり、そこにかかる月をとらえる。聴覚から視覚へと移る構成で、前歌の視覚から聴覚への流れと逆になっている。
結句「さ夜や更けぬる」の「さ」は接頭語、「や」は疑問の係助詞で、完了の助動詞「ぬ」の連体形「ぬる」と係り結びをなす。月の位置と声の冴えから、夜が更けたことを推し量る。前歌の夕暮から夜更けへと時が進み、巻第四の月の歌群の余韻も「尾上の月」に残る。「山おろし」は、本巻の第四百三十九首「野分」、第四百四十首「嵐」、第四百四十一首「秋風」、第四百四十二首「嵐」、第四百四十四首「松の嵐」と続く、鹿の声を運ぶ風の起点となる。「尾上」は第四百四十四首「尾上に帰る」で再び用いられる。また、夜更けを推し量る本歌に対し、第四百四十七首は「明けやしぬらん」と夜明けを推し量り、対をなす。
やまおろし:山から吹き下ろす風
をのへ:山の峰、頂のあたり
ふく:夜が深くなる
- 作者
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三条実房
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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