嵐吹く真葛が原に鳴く鹿は
うらみてのみや妻を恋ふらん
- 歌の意味
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嵐の吹く真葛が原で鳴く鹿は、風に葛の葉が裏を見せるように、恨みを抱いてばかりで妻を恋い慕っているのだろうか。
- 鑑賞
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巻第五 秋歌下 440
詞書「題しらず」
鹿を詠む一連の四首目である。嵐に葛の葉が裏を見せる真葛が原で、鹿は恨みながら妻を恋うているのかと推し量る。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者は源俊頼の子で、東大寺の僧となり、京の白川の自坊を歌林苑と称して多くの歌人を集め、歌会を催した。
場面は嵐の吹く秋、場所は葛の生い茂る真葛が原である。真葛が原は京の東山のふもとの地名としても知られる。
直接の契機は伝わらない。
葛の葉が風に翻って葉裏を見せることから「裏見」に「恨み」を掛ける趣向には、古今集恋五の平貞文「秋風の吹き裏返す葛の葉のうらみてもなほうらめしきかな」という先例がある。
初句「嵐吹く」は、山から激しい風が吹き下ろす、の意である。前の二首の風を受ける。
二句「真葛が原に」の「真」は美称で、葛の生い茂る原を指す。
三句「鳴く鹿は」で、この歌の主題となる鹿が示される。前歌までひとりで鳴いていた鹿が、ここで妻を恋う鹿として明らかにされる。
四句「うらみてのみや」の「うらみ」は、風に翻る葛の葉の裏を見る「裏見」と、「恨み」とを掛ける掛詞で、「嵐」「葛」と縁語の関係にある。「のみ」は限定の副助詞、「や」は疑問の係助詞である。景の上の「裏見」と心の上の「恨み」を一語に重ねた点が眼目である。
結句「妻を恋ふらん」の「らん」は現在推量の助動詞「らむ」の連体形で、「や」と係り結びをなす。嵐の中の鹿の声を、恨みつつ妻を恋う声と聞きなしている。次歌の第四百四十一首は「妻恋ふる」と本歌の結句を受けて起こし、しりとり風に連なる。また、葛の葉を裏返す風の趣向は、本巻の第四百五十首「葛の裏風」で再び用いられる。
まくずがはら:葛の生い茂る原。「真」は美称
うらむ:葛の葉の裏を見る意と、恨む意を掛ける
こふ:恋い慕う
- 作者
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俊恵
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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