妻恋ふる鹿のたちどを尋ぬれば
さ山が裾に秋風ぞ吹く
- 歌の意味
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妻を恋うて鳴く鹿の居場所を尋ねてゆくと、鹿の姿はなく、山の裾にはただ秋風が吹いている。
- 鑑賞
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巻第五 秋歌下 441
詞書は前の歌に続き「題しらず」
鹿を詠む一連の五首目である。妻を恋う鹿の居場所を尋ねてゆくと、姿はなく山裾に秋風が吹くばかりである。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者は平安後期の学者、歌人で、後三条、白河、堀河の三代に仕え、正二位権中納言に至った。
場面は秋、場所は鹿の声のする山の裾である。
直接の契機は伝わらない。
初句「妻恋ふる」は、妻を恋い慕う、の意である。前歌の結句「妻を恋ふらん」を受けて起こしている。
二句「鹿のたちどを」の「たちど」は、鹿の立っている所、居場所である。
三句「尋ぬれば」は、已然形に「ば」が付いて「尋ねてゆくと」の意を表す。鳴き声をたよりに鹿のいる所を探し求めるのである。前歌が鹿の心を推し量ったのに対し、本歌は実際に鹿を尋ねる行為へと転じている。
四句「さ山が裾に」の「さ」は接頭語で、山のふもとを指す。
結句「秋風ぞ吹く」の「ぞ」は強意の係助詞で、連体形「吹く」で結ぶ。声のする方を訪ねても鹿の姿はなく、ただ秋風が吹いているばかりで、声から不在、そして風へと移る中に寂しさが残る。この結句は、本巻の第四百七十一首、第五百三十三首、第五百三十九首でも用いられ、秋歌下を通じて繰り返される結句の型である。
たちど:立っている所、居場所
たづぬ:ありかを探し求めて行く
すそ:山のふもと
- 作者
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大江匡房
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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