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鳴く鹿の声に目覚めて偲ぶかな
見果てぬ夢の秋の思ひを

歌の意味
鳴く鹿の声に目を覚まされて、しみじみと思い返すことだ。見終わらないうちに途切れた夢の中の、秋の物思いを。
鑑賞
巻第五 秋歌下 445

詞書「千五百番歌合に」
 鹿を詠む一連の九首目である。鹿の声に目を覚まし、見終わらなかった夢の中の秋の物思いを偲ぶ。詞書によれば、千五百番歌合の歌として詠まれた。
 作者は関白藤原忠通の子で、九条兼実の弟にあたる。天台座主を四度務め、歴史書『愚管抄』を著した。
 場面は秋の夜半、場所は鹿の声の聞こえる寝所である。
 直接の契機は千五百番歌合への詠進である。千五百番歌合は建仁二年(1202)ごろに成立し、後鳥羽院が三十人の歌人に召した百首歌を千五百番に結番したもので、実際に人が集まって催したものではない。

 初句「鳴く鹿の」で、夜に鳴く鹿が示される。
 二句「声に目覚めて」は、鹿の声によって眠りを破られた、の意である。前歌までの屋外で鹿の声を聞く歌から、寝所の内で目を覚ます歌へと転じている。
 三句「偲ぶかな」の「偲ぶ」は、思い慕う、心に思い返す意で、「かな」は詠嘆の終助詞である。ここで句が切れる。
 四句「見果てぬ夢の」は、終わりまで見ることのできなかった夢の、の意である。鹿の声によって夢が途切れたことを示す。
 結句「秋の思ひを」は、三句「偲ぶ」の対象を倒置して後に置いたものである。夢の中で抱いていた秋の物思いが、目覚めた後もなお心に残り、それを慕わしく思い返す。鹿の声は夢を破るとともに、秋の物思いを深めるものとして働いている。以下、本巻の第四百四十七首「寝覚めして」、第四百四十八首「驚かされて」、第四百四十九首「寝覚めして」と、鹿の声による目覚めの趣向が続き、本歌はその起点となる。

しのぶ:思い慕う。過ぎ去ったものを心に思い返す
みはつ:終わりまで見届ける
けちばん:歌合で、左右の歌を一番ずつ組み合わせること
作者
慈円
出典
新古今和歌集
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