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ひとり寝やいとどさびしきさを鹿の
朝伏す小野の葛の裏風

歌の意味
独り寝はいっそう寂しいのだろうか。さ牡鹿が朝に伏す小野では、葛の葉を裏返して風が吹いている。
鑑賞
巻第五 秋歌下 450

詞書「郁芳門院の前栽合によみ侍りける」
 鹿を詠む一連の十四首目である。さ牡鹿の独り寝はいっそう寂しいのだろうかと思いやり、鹿が朝に伏す小野に葛の葉を裏返す風が吹く景で結ぶ。詞書によれば、郁芳門院の前栽合で詠まれた。
 作者は平安後期の官人、歌人である。
 場面は秋の朝、場所は葛の生える小野である。
 直接の契機は、郁芳門院のもとで催された前栽合への詠進である。郁芳門院は白河天皇の皇女媞子内親王で、堀河天皇の准母となった。前栽合は、庭の植え込みの草花を左右に分かれて出し合い、歌を添えて優劣を競う遊びである。

 初句「ひとり寝や」の「や」は疑問の係助詞で、二句の「さびしき」と係り結びをなす。
 二句「いとどさびしき」の「いとど」は、いっそう、の意である。独り寝の寂しさがひときわ募るさまを推し量る。
 三句「さを鹿の」で、独り寝をするのが牡鹿であることが示される。夜通し妻を求めて鳴いても得られなかった鹿である。
 四句「朝伏す小野の」は、夜に鳴いた鹿が朝になって伏して寝る野、の意で、「小」は接頭語である。本巻の第四百四十五首から第四百四十九首までの夜半の寝覚めの歌を受け、時が朝へ移る。
 結句「葛の裏風」は、葛の葉を吹き返して白い葉裏を見せる風で、体言止めである。独り伏す鹿の寝所を吹く風の冷たさと葉裏の白さによって、その寂しさを具象化している。葛の葉を裏返す風は第四百四十首「真葛が原」「うらみて」と呼応し、小野に鹿が伏す趣向は第四百三十九首「小野の草ぶし」に対応する。第四百三十九首では寝所が荒れて鹿が去ったのに対し、本歌では寝所に鹿が独り伏しており、構図が反転している。初句「ひとり」は第四百三十七首「ひとり鹿の鳴くらん」とも響き合う。

ひとりね:妻と離れて独りで寝ること
ふす:横になって寝る
くずのうらかぜ:葛の葉を吹き返して白い葉裏を見せる風
せんざいあはせ:庭の植え込みの草花を左右に分かれて出し、歌を添えて優劣を競う遊び
作者
藤原顕綱
出典
新古今和歌集
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