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秋の野の草葉押しなみ置く露に
濡れてや人の尋ね行くらん

歌の意味
秋の野の草葉を押し伏せるほどに置く露に濡れながら、人は尋ねて行くのだろうか。
鑑賞
巻第五 秋歌下 468

詞書「白河院にて野草露繁といへる心を」
 露を詠む一連の八首目である。秋の野の草葉を押し伏せるほど置く露に濡れながら、人は尋ねて行くのだろうかと思いやる。詞書によれば、白河院のもとで「野草露繁し」を題として詠まれた。
 作者は修理大夫藤原顕季の子で、権中納言に至った。娘の得子が鳥羽天皇の皇后美福門院となり、近衛天皇の外祖父として、没後に左大臣を贈られた。
 場面は秋、場所は草葉に露の多く置いた野である。
 直接の契機は、白河院のもとで「野草露繁」の題が出されたことである。

 初句「秋の野の」で、題の「野」が示される。
 二句「草葉押しなみ」の「押しなみ」は、押し伏せる意の「押しなむ」の連用形で、露の重みで草葉がなびき伏すさまを表す。題の「野草」にあたる。
 三句「置く露に」で、題の「露繁し」が示される。草葉を押し伏せるほどの露の多さである。
 四句「濡れてや人の」の「や」は疑問の係助詞で、結句の「らん」と係り結びをなす。露に濡れるのは、野を行く人である。
 結句「尋ね行くらん」の「らん」は現在推量の助動詞「らむ」の連体形で、見えないところで露に濡れつつ野を尋ねて行く人を思いやる。前歌の第四百六十七首が同じ「露繁し」の題で人の訪れない庭の露を詠んだのに対し、本歌は人の分け入る野の露を詠み、庭と野、訪れのない所と訪ねる人とが対をなす。第四百六十六首は花を尋ねた後に「濡れてぞ帰る」と詠んでおり、本歌の「濡れてや…尋ね行く」とは、帰りと行きの対となっている。

おしなむ:押し伏せる、押しなびかせる
たづぬ:ありかを探し求めて行く
作者
藤原長実
出典
新古今和歌集
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