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虫の音も長き夜あかぬ故郷に
なほ思ひ添ふ松風ぞ吹く

歌の意味
虫の声も長い夜を鳴き飽きることなく、夜も明けない故郷に、さらに物思いを添える松風が吹く。
鑑賞
巻第五 秋歌下 473

詞書「守覚法親王五十首歌の中に」
 虫を詠む一連の二首目である。長い夜を虫が鳴き飽きることなく、夜も明けやらぬ故郷に、なお物思いを添える松風が吹く。詞書によれば、守覚法親王に奉った五十首歌の中の一首である。
 作者は藤原光隆の子で、従二位宮内卿に至った。和歌所の寄人であり、新古今集の撰者の一人である。
 場面は秋の長い夜、場所は荒れた故郷の里である。
 直接の契機は、後白河天皇の皇子で仁和寺の門跡であった守覚法親王が歌人たちに詠ませた五十首歌への詠進である。

 初句「虫の音も」の「音」は虫の鳴く声、「も」は、松風と並べて、虫の声もまた、の意を含む。前歌の第四百七十二首の弱って遠ざかる虫の声に対し、本歌の虫は鳴き続けている。
 二句「長き夜あかぬ」の「あかぬ」は、虫が鳴き「飽かぬ」の意と、長い夜が「明かぬ」の意とを掛ける掛詞である。
 三句「故郷に」の「故郷」は、昔住んだ所、また荒れた旧都や里である。
 四句「なほ思ひ添ふ」は、虫の声の上にさらに物思いを加える、の意である。
 結句「松風ぞ吹く」の「ぞ」は強意の係助詞で、連体形「吹く」で結ぶ。虫の声と松風の音とを重ね、故郷の秋の夜の寂しさを聴覚によって深めている。結句の形は第四百七十一首「秋風ぞ吹く」を受けて「松風ぞ吹く」とし、次歌の第四百七十四首「松虫の声」とは「松」の語でつながる。

あく:虫が鳴き「飽く」の意と、夜が「明く」の意を掛ける
ふるさと:昔住んだ所、また荒れた旧都や里
おもひそふ:物思いを加える
作者
藤原家隆
出典
新古今和歌集
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