秋風は身にしむばかり吹きにけり
今や打つらん妹がさ衣
- 歌の意味
-
秋風は身にしみるほどに吹くようになった。今ごろは、妻が衣を打っているのだろうか。
- 鑑賞
-
巻第五 秋歌下 475
詞書「題しらず」
擣衣を詠む一連の一首目である。秋風が身にしみるほど吹くようになり、今ごろ妻が衣を打っているだろうかと遠く思いやる。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者は平安中期の官人、歌人である。
場面は秋風の身にしみる晩秋、場所は妻と離れて過ごす作者の身辺と、遠くの妻の家である。
直接の契機は伝わらない。
砧で衣を打つ擣衣は、布を柔らかくし、つやを出すための秋の夜なべ仕事である。漢詩の影響を受けて、遠く離れた夫を思いながら妻が衣を打つ趣が和歌にも詠まれた。
初句「秋風は」の「は」は、他と区別して示す係助詞で、秋風を主題として示す。
二句「身にしむばかり」は、身にしみ通るほどに、の意で、秋風の冷たさの程度を示す。
三句「吹きにけり」の「に」は完了の助動詞「ぬ」の連用形、「けり」は詠嘆で、秋風の冷たさに気づいた感慨を表す。ここで句が切れる。本巻の第四百五十四首以下で詠まれた秋の寒さを受け、衣の歌へと移る。
四句「今や打つらん」の「や」は疑問の係助詞で、現在推量の助動詞「らむ」の連体形「らん」と係り結びをなす。今この時、遠くで衣を打っているだろうと推し量る。
結句「妹がさ衣」の「妹」は妻や恋人、「さ」は接頭語である。体言止めで、打たれている衣を最後に示す。寒さの募る季節に、夫のために冬の衣を整える妻の姿を思いやっており、擣衣の一連の冒頭に、衣を打つ者を遠くから思う立場を置いている。
しむ:しみ通る
いも:妻や恋人
さごろも:衣。「さ」は接頭語
きぬた:衣を打つための台、またそれを打つこと
- 作者
-
藤原輔尹
- 出典
-
新古今和歌集
- その他の歌
-