跡もなき庭の浅茅にむすぼほれ
露の底なるまつ虫の声
- 歌の意味
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人の訪れた跡もない庭の浅茅に絡まり、結ぼれた露の底から聞こえる松虫の声よ。
- 鑑賞
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巻第五 秋歌下 474
詞書「百首歌の中に」
虫を詠む一連の三首目で、一連の最後の歌である。人の訪れた跡もない庭の浅茅に結ぼれた露の底から、松虫の声が聞こえる。詞書によれば、百首歌の中の一首である。
作者は後白河天皇の皇女で、賀茂の斎院を務めた。藤原俊成に和歌を学んだ。
場面は秋、場所は人の訪れが絶えて浅茅の生い茂った庭である。
直接の契機は、正治二年(1200)の後鳥羽院初度百首への詠進である。
初句「跡もなき」は、人の訪れた足跡もない、の意で、訪れる人の絶えた庭を示す。
二句「庭の浅茅に」の「浅茅」は丈の低い茅で、荒れた庭のしるしである。本巻の第四百六十七首の蓬の茂る閑庭、第四百六十三首、第四百六十四首の浅茅と、荒れた庭や浅茅に置く露の歌を受けている。
三句「むすぼほれ」は、露が玉となって結ぼれる意と、心が晴れずにふさぐ意とを重ねる。浅茅に絡まり結ぼれた露の中に、訪れを待つ者のふさいだ心が映される。
四句「露の底なる」は、露の奥深く、露に埋もれたところにある、の意で、虫の声が露の底から響くように聞こえるさまを言う。
結句「まつ虫の声」は体言止めである。「まつ」には虫の名の松虫に、人の訪れを「待つ」意が掛けられ、跡もない庭で来ない人を待つ心が虫の声に託される。前歌の第四百七十三首「松風」とは「松」の語でつながり、露と虫とを一首に結んで、露の一連から虫の一連への移りを受け止めつつ虫の一連を閉じる。
あさぢ:丈の低い茅
むすぼほる:露が玉となって結ぼれる。また、心が晴れずにふさぐ
まつむし:虫の名の松虫に、人を待つ意を掛ける
- 作者
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式子内親王
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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