更けにけり山の端近く月冴えて
とをちの里に衣打つ声
- 歌の意味
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夜はすっかり更けてしまった。山の端近くに月が冴え冴えと照り、遠い十市の里から衣を打つ音が聞こえる。
- 鑑賞
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巻第五 秋歌下 485
詞書「百首歌奉りし時」
擣衣を詠む一連の十一首目で、一連の最後の歌である。夜が更けて山の端近くに月が冴え、遠い十市の里から衣を打つ音が聞こえると詠む。詞書によれば、百首歌の中の一首として詠まれた。
本歌には作者名が記されておらず、前歌を受けて式子内親王の歌として配されている。作者は後白河天皇の皇女で、賀茂の斎院を務めた。藤原俊成に和歌を学んだ。
場面は秋の夜更け、場所は月の傾く山の端を望み、遠く十市の里の砧の音が聞こえる所である。十市の里は大和国の歌枕である。
直接の契機は百首歌の詠作である。新古今集でこの詞書は、正治二年(1200)の後鳥羽院初度百首を指すことが多い。
初句「更けにけり」の「に」は完了の助動詞「ぬ」の連用形、「けり」は詠嘆で、夜が更けたことに気づいた感慨を表す。ここで句が切れる。
二句「山の端近く」の「山の端」は、山の稜線で、月が西に傾いて山の端に近づいていることを示す。
三句「月冴えて」は、月の光が冷たく澄みわたって、の意で、夜更けの寒さを視覚から示す。
四句「とをちの里に」の「とをち」は、大和国の地名「十市」と、遠い意の「遠」とを掛ける掛詞で、はるかな里を示す。
結句「衣打つ声」は体言止めで、遠くから届く砧の音によって一首を結ぶ。月の冴える視覚と、遠い砧の音という聴覚とを重ね、夜更けの静けさを広がりの中に描く。結句は本巻の第四百七十九首「月に打つ声」と同じく「打つ声」で結ばれ、月と砧を合わせて擣衣の一連を閉じる。月の冴える景は、次の第四百八十六首から続く月の歌へと移る橋渡しとなっている。
やまのは:山の稜線、空と接する山の端
さゆ:冷たく澄みわたる
とをち:地名の「十市」と、遠い意の「遠」を掛ける
- 作者
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式子内親王
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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