雁がねは風に競ひて過ぐれども
我が待つ人の言伝もなし
- 歌の意味
-
雁は風と先を争うように飛び過ぎてゆくけれど、私が待つ人からの言伝はない。
- 鑑賞
-
巻第五 秋歌下 500
詞書は前の歌に続き「題しらず」
雁を詠む一連の四首目である。雁は風と競うように飛び過ぎてゆくのに、待つ人からの言伝はないと嘆く。詞書は前の歌に続いて題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者は「読人しらず」で、名は伝わらない。
場面は雁の渡る秋、場所は人の訪れや便りを待つ住まいである。
直接の契機は伝わらない。
初句「雁がねは」の「は」は、他と区別して示す係助詞で、雁を主題とする。
二句「風に競ひて」の「競ひ」は、先を争う意で、風と競うように速く飛ぶさまを示す。
三句「過ぐれども」の「ども」は逆接の接続助詞で、飛び過ぎてゆくけれども、の意である。
四句「我が待つ人の」は、私が帰りや便りを待っている人の、の意である。
結句「言伝もなし」の「言伝」は伝言である。雁は便りを運ぶ使いとされるのに、待つ人からの便りは運んで来ないと、期待を裏切られた嘆きを詠む。第四百八十一首では旅の空にいる側が、故郷の様子を雁が告げるだろうかと思いやったが、本歌では待つ側が、雁の運ばぬ便りを嘆いており、便りを受ける期待と失望とが対をなす。「待つ」は第四百八十二首「君待ちがてに」とも通じる。
きほふ:先を争う、競う
ことづて:伝言、便り
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
新古今和歌集
- その他の歌
-