- 歌の意味
-
横にたなびく雲が風に吹き分かれてゆく明け方に、山を飛び越えてゆく初雁の声が聞こえる。
- 鑑賞
-
巻第五 秋歌下 501
詞書は前の歌に続き「題しらず」
雁を詠む一連の五首目である。横雲が風に吹き分かれてゆく明け方に、山を飛び越える初雁の声が聞こえると詠む。詞書は前の歌に続いて題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者は俗名を佐藤義清といい、鳥羽院の北面の武士であったが、二十三歳で出家し、諸国を旅して歌を詠んだ。家集に『山家集』がある。
場面は秋の明け方、場所は横雲のたなびく山の見える所である。
直接の契機は伝わらない。
初句「横雲の」の「横雲」は、明け方の空に横にたなびく雲である。
二句「風に別るる」は、横雲が風に吹かれて分かれてゆくさまである。巻第一の第三十八首の藤原定家「峰に別るる横雲の空」と同じく、明け方に分かれる横雲を詠む。
三句「東雲に」の「東雲」は、夜明け方、空の白みはじめるころである。
四句「山飛び越ゆる」は、山を飛び越えてゆく、の意で、第四百九十八首と同じ句である。
結句「初雁の声」は体言止めで、秋に初めて渡って来た雁の声を示す。風に分かれる横雲の視覚の景と、山を越える初雁の声の聴覚とを重ね、明け方の澄んだ空の広がりを描く。第四百九十八首では山を越える雁が雲に隠れて遠ざかる姿を見送ったのに対し、本歌は同じ句で初雁の声を聞き、夕べや夜ではなく明け方の空に置いている。
よこぐも:明け方の空に横にたなびく雲
わかる:離れ離れになる、分かれる
しののめ:夜明け方、空の白みはじめるころ
- 作者
-
西行
- 出典
-
新古今和歌集
- その他の歌
-