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秋風の袖に吹きまく峰の雲を
翼にかけて雁も鳴くなり

歌の意味
秋風が旅行く私の袖に吹き巻く峰の雲を、翼にかけるようにして、雁も鳴いてゆくようだ。
鑑賞
巻第五 秋歌下 506

詞書「詩に合はせし歌の中に、山路秋行」
 雁を詠む一連の十首目で、一連の最後の歌である。秋風が袖に吹き巻く峰の雲を翼にかけて、雁も鳴いてゆくと詠む。詞書によれば、漢詩と和歌を番えた詩歌合の中で「山路秋行」を題として詠まれた。
 作者は藤原光隆の子で、従二位宮内卿に至った。和歌所の寄人であり、新古今集の撰者の一人である。
 場面は秋の旅、場所は雲のかかる峰を越える山路である。
 直接の契機は、漢詩と和歌を題ごとに番えて優劣を競う詩歌合で、「山路秋行」の題が出されたことである。

 初句「秋風の」は、二句の「吹きまく」の主語を示す。
 二句「袖に吹きまく」は、山路を行く旅人の袖に巻きつくように吹く、の意で、題の「山路秋行」の旅人の姿を示す。
 三句「峰の雲を」は六音の字余りで、峰にかかる雲を指す。
 四句「翼にかけて」は、雲を翼に掛けるように雲の中を飛ぶさまで、本巻の第五百二首「白雲を翼にかけて」と同じ趣向である。
 結句「雁も鳴くなり」の「も」は、旅人とともに雁もまた、の意、「なり」は音声にもとづく推定の助動詞である。旅人の袖に吹き巻く峰の雲を、同じく雁が翼にかけて鳴いてゆくと、旅人と雁とを同じ山路の秋の旅の中に並べている。前歌の第五百五首とは「翼」「秋風」を共有し、雁の一連の結びとして、空を渡る雁に地上を行く旅人の姿を重ねて閉じている。

ふきまく:風が巻きつくように吹く
しいかあはせ:漢詩と和歌を題ごとに番えて優劣を競う催し
作者
藤原家隆
出典
新古今和歌集
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