今よりはまた咲く花もなきものを
いたくな置きそ菊の上の露
- 歌の意味
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これから後はもう咲く花もないのだから、ひどく置かないでおくれ、菊の上の露よ。
- 鑑賞
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巻第五 秋歌下 509
詞書「題しらず」
菊を詠む一連の三首目で、一連の最後の歌である。これから後は咲く花もないのだから、菊の上の露よ、ひどく置いて花を傷めるなと呼びかける。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者は大納言藤原公任の子で、権中納言に至った。中古三十六歌仙の一人である。
場面は菊の咲く晩秋、場所は露の置く菊のある庭である。
直接の契機は伝わらない。
和漢朗詠集の菊に採られた元稹の詩句「是れ花の中に偏へに菊を愛するにはあらず、此の花開けて後更に花の無ければなり」と同じく、菊を一年の最後の花とする考えにもとづく。
初句「今よりは」は、今から後は、の意である。本巻の第四百五十七首と同じ初句で、そちらではこれから寒くなる秋風を思ったが、本歌ではこれから花のない季節を思う。
二句「また咲く花も」の「また」は、ほかに、さらに、の意で、菊の後にはもう咲く花がないことを示す。
三句「なきものを」の「ものを」は逆接的な詠嘆を含む接続助詞で、ないのだから、の意となる。
四句「いたくな置きそ」は、「な…そ」で禁止を表し、ひどく置くな、の意である。露が重く置いて菊を傷めることを案じている。
結句「菊の上の露」は八音の字余りで、呼びかけの対象を最後に置く。菊を一年の最後の花として惜しみ、その菊を損なう露に語りかける。前歌の第五百八首が菊に移ろっても籬を忘れるなと呼びかけたのに続き、本歌も擬人化された露に呼びかけて菊の一連を閉じる。露への呼びかけは、次歌の第五百十首の「いたく」の語とも響き合い、花から虫へと移る。
おく:露や霜が降りる
- 作者
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藤原定頼
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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