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秋更けぬ鳴けや霜夜のきりぎりす
やや影寒し蓬生の月

歌の意味
秋も深まった。鳴けよ、霜の降る夜のきりぎりす。次第に月の光も寒々としてきた、蓬の生い茂る庭の月よ。
鑑賞
巻第五 秋歌下 517

詞書「秋歌とて」
 暮秋を詠む一連の三首目である。秋も深まった、霜夜のきりぎりすよ鳴け、蓬生の月の光も次第に寒くなったと詠む。詞書によれば、秋の歌として詠まれた。
 作者は高倉天皇の皇子で、譲位後に院政をしき、和歌所を置いて新古今集の撰集を命じた。承久の乱に敗れて隠岐に配流された。
 場面は霜の降る晩秋の夜、場所は蓬の生い茂る荒れた庭である。
 直接の契機は秋の歌の詠作であるが、詞書に詠まれた場や年次は記されていない。

 初句「秋更けぬ」の「ぬ」は完了の助動詞で、秋も深まった、の意である。ここで句が切れる。
 二句「鳴けや霜夜の」の「鳴け」は命令形、「や」は詠嘆の間投助詞で、鳴けよと呼びかける。「霜夜」は霜の降る寒い夜である。
 三句「きりぎりす」は呼びかけの対象で、ここで句が切れる。次歌の第五百十八首は「きりぎりす鳴くや霜夜の」と、同じ語を順を変えて用いている。
 四句「やや影寒し」の「やや」は、次第に、「影」は月の光で、月の光が次第に寒々としてきた、の意である。ここで句が切れる。
 結句「蓬生の月」は体言止めで、蓬の生い茂る荒れた庭を照らす月である。初句、三句、四句で切れる短い句を重ね、秋の深まり、虫への呼びかけ、月光の寒さを畳みかけて、暮秋の寂しさを強める。蓬の茂る庭は、本巻の第四百六十七首の蓬の茂る閑庭を思わせる。

しもよ:霜の降る寒い夜
きりぎりす:今のこおろぎ
よもぎふ:蓬の生い茂った所。荒れた住まいのさまを示す
作者
後鳥羽院
出典
新古今和歌集
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