きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに
衣片敷きひとりかも寝ん
- 歌の意味
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きりぎりすが鳴く霜の降る寒い夜に、寒々とした筵の上に衣の片袖を敷いて、独りで寝るのだろうか。
- 鑑賞
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巻第五 秋歌下 518
詞書「百首歌奉りし時」
暮秋を詠む一連の四首目である。きりぎりすの鳴く霜夜に、寒い筵に衣を片敷いて独りで寝るのかと嘆く。詞書によれば、百首歌の中の一首として詠まれた。
作者は九条兼実の子で、摂政太政大臣に至り、後京極殿と称された。新古今集の仮名序を執筆した。
場面は霜の降る晩秋の夜、場所は独り寝の寝所である。
直接の契機は、正治二年(1200)の後鳥羽院初度百首への詠進である。
古今集恋四の「さむしろに衣片敷き今宵もや我を待つらむ宇治の橋姫」と、拾遺集恋三の柿本人麿「あしひきの山鳥の尾のしだり尾の長々し夜をひとりかも寝む」を本歌とする。小倉百人一首に採られている。
初句「きりぎりす」は、今のこおろぎにあたる虫で、霜夜に鳴く声を示す。
二句「鳴くや霜夜の」の「や」は詠嘆の間投助詞である。前歌の第五百十七首「鳴けや霜夜のきりぎりす」と同じ語を用い、そちらの命令形の呼びかけに対し、本歌では鳴いている声を聞く形としている。
三句「さむしろに」の「さむ」は、霜夜が「寒し」の意と、「さ筵」の「さむしろ」とを掛ける掛詞である。本歌の古今集歌の初句を取り、第四百八十九首「衣さむしろ」と同じ掛詞を用いる。
四句「衣片敷き」は、衣の片袖だけを敷いて寝る、の意で、共寝の相手のいない独り寝を示す。本歌の古今集歌の二句をそのまま取る。
結句「ひとりかも寝ん」の「か」は疑問、「も」は詠嘆の係助詞で、「ん」は推量の助動詞「む」の連体形として係り結びをなす。人麿の本歌の結句を取り、霜夜の寒さときりぎりすの声の中で独り寝をする寂しさを詠む。二つの本歌を組み合わせ、待つ女を詠んだ古今集歌と独り寝の長夜を詠んだ人麿歌を、晩秋の霜夜の景に移している。人麿歌は本巻の第四百八十七首でも本歌とされており、そちらが山鳥の尾に霜を置いたのに対し、本歌はきりぎりすの声と筵の寒さによって同じ独り寝を描く。
さむしろ:霜夜が「寒し」の意と、寝るときに敷く「さ筵」を掛ける
かたしく:衣の片袖だけを敷いて独りで寝る
- 作者
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藤原良経
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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