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秋深き淡路の島の有明に
傾く月を送る浦風

歌の意味
秋の深まった淡路島の有明の空に、西へ傾いてゆく月を見送るように吹く浦風よ。
鑑賞
巻第五 秋歌下 520

詞書「和歌所にて六首歌つかうまつりし時、秋歌」
 暮秋を詠む一連の六首目である。秋の深まった淡路島の有明に、傾く月を送るように浦風が吹くと詠む。詞書によれば、和歌所で六首の歌を詠進した折の秋の歌である。
 作者は関白藤原忠通の子で、九条兼実の弟にあたる。天台座主を四度務め、歴史書『愚管抄』を著した。
 場面は深まった秋の明け方、場所は淡路島の浦である。淡路島は淡路国の歌枕である。
 直接の契機は、和歌所で六首の歌を詠進した際の、秋の題による詠である。

 初句「秋深き」は、秋が深まった、の意である。前々歌の第五百十七首「秋更けぬ」と同じく暮秋を示す。
 二句「淡路の島の」で、場所が海に囲まれた淡路島と定められる。
 三句「有明に」の「有明」は、夜が明けてもまだ空に月が残っているころである。
 四句「傾く月を」は、西へ沈みかけている月を、の意である。本巻の第五百三首「大江山傾く月の影冴えて」と同じ語で、そちらでは山に傾く月であったのに対し、本歌では海の島に傾く月である。
 結句「送る浦風」は体言止めで、「送る」は去ってゆく月を見送る意である。浦を吹く風を、沈んでゆく月を見送るものと擬人化し、明け方の海辺の広がりの中に、過ぎ去ろうとする秋を月とともに送る心を託している。次歌の第五百二十一首も「有明」の語を受けて暮秋の月を詠む。

ありあけ:夜が明けても空に月が残っているころ
かたぶく:月などが西に沈みかける
うらかぜ:浦を吹く風
作者
慈円
出典
新古今和歌集
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