鵲の雲のかけはし秋暮れて
夜半には霜や冴えわたるらん
- 歌の意味
-
鵲が雲の上にかけ渡す橋も、秋が暮れて、夜半には霜が一面に冴えわたっているのだろうか。
- 鑑賞
-
巻第五 秋歌下 522
詞書「摂政太政大臣大将に侍りける時、百首歌よませ侍りけるに」
暮秋を詠む一連の八首目で、一連の最後の歌である。秋が暮れて、鵲が雲の上に渡す橋にも、夜半には霜が冴えわたっているだろうかと思いやる。詞書によれば、藤原良経が大将であったころ、百首歌を詠ませた折の一首である。
作者は俗名を藤原定長といい、藤原俊成の甥にあたり、その猶子となった。新古今集の撰者に任ぜられたが、撰進を見ずに没した。
場面は秋の暮れの夜半、場所は天の川のかかる夜空である。
直接の契機は、藤原良経が近衛大将であったころに歌人たちに詠ませた百首歌への詠進である。
鵲の橋は、七夕の夜に鵲が翼を並べて天の川に橋を渡し、織女がそれを渡って牽牛に逢うという中国の伝説にもとづく。
初句「鵲の」は、七夕の伝説で天の川に橋を渡す鳥として置かれる。
二句「雲のかけはし」は、雲の上の空にかけ渡した橋で、鵲の橋を指す。
三句「秋暮れて」は、秋が終わりに近づいて、の意で、七夕の頃から時が過ぎ、暮秋に至ったことを示す。
四句「夜半には霜や」の「や」は疑問の係助詞で、結句の「らん」と係り結びをなす。
結句「冴えわたるらん」の「冴え」は冷たく澄む意、「わたる」は一面に…する意で、橋の縁語として「渡る」を響かせる。「らん」は現在推量の助動詞「らむ」の連体形である。七夕に恋人たちの渡った橋に、暮秋には霜が冷たく置いているだろうと、季節の移りと寂しさを空の景に託す。本巻の第五百十九首「霜や置くらん」と同じく霜を推し量る形で暮秋の一連を閉じ、次の第五百二十三首から紅葉の歌に移る。鵲の橋に置く霜は、巻第六の第六百二十首の大伴家持「鵲の渡せる橋に置く霜の白きを見れば夜ぞ更けにける」にも詠まれる。
かささぎ:カラス科の鳥。七夕に翼を並べて天の川に橋を渡すとされる
かけはし:空中にかけ渡した橋
さえわたる:一面に冷たく澄む。「わたる」は橋の縁語
- 作者
-
寂蓮
- 出典
-
新古今和歌集
- その他の歌
-