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入日さす佐保の山辺の柞原
曇らぬ雨と木の葉降りつつ

歌の意味
夕日の差す佐保の山辺の柞の林では、曇ってもいない空から降る雨のように、木の葉が降り続いている。
鑑賞
巻第五 秋歌下 529

詞書「題しらず」
 紅葉を詠む一連の七首目である。夕日の差す佐保の山辺の柞原に、曇らぬ空から降る雨のように木の葉が降り続くと詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者は平安中期の歌人で、丹後掾を務めたことから曽丹とも呼ばれた。
 場面は晩秋の夕暮、場所は佐保山のあたりの柞の林である。佐保山は大和国の歌枕で、柞の紅葉が詠まれる。
 直接の契機は伝わらない。

 初句「入日さす」は、沈んでゆく夕日が差す、の意である。本巻の第五百十三首と同じ初句である。
 二句「佐保の山辺の」は、佐保山のあたりの、の意である。
 三句「柞原」の「柞」は、コナラなどの落葉樹の古名で、その林に夕日が差す景である。
 四句「曇らぬ雨と」は、曇ってもいない空から降る雨として、の意で、次の木の葉の落ちるさまを雨に見立てる。
 結句「木の葉降りつつ」の「つつ」は継続を表し、木の葉が降り続くさまで止める。夕日の差す晴れた空の下で、散る木の葉をしきりに降る雨と見立て、光と落葉の景を重ねる。前の第五百二十五首から第五百二十七首までは時雨と紅葉の関係が詠まれたが、本歌は雨の降らない空の下で木の葉自体を雨に見立てており、時雨の通念を景の見立てへと転じている。「柞原」は次の第五百三十一首の初句にも用いられる。

いりひ:沈んでゆく夕日
ははそ:コナラなどの落葉樹の古名
ふる:雨などが降る。ここでは木の葉が散り落ちること
作者
曽禰好忠
出典
新古今和歌集
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