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立田山嵐や峰に弱るらん
渡らぬ水も錦絶えけり

歌の意味
立田山では嵐が峰で弱まったのだろうか。誰も渡っていない川の水にも、紅葉の錦の流れが途切れてしまった。
鑑賞
巻第五 秋歌下 530

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 紅葉を詠む一連の八首目である。立田山の嵐が峰で弱まったのか、誰も渡らない川の紅葉の錦が途切れたと詠む。詞書は前の歌に続いて題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者は源師光の娘で、後鳥羽院に仕えた女房歌人である。若くして歌才を認められ、院の歌壇で活躍したが、早世した。
 場面は紅葉の散る晩秋、場所は立田山と、そのふもとを流れる川である。
 直接の契機は伝わらない。
 古今集秋下のよみ人しらず「竜田川紅葉乱れて流るめり渡らば錦中や絶えなむ」を本歌とする。本歌は、竜田川に紅葉が乱れ流れており、渡れば錦の途中が切れてしまうだろうと詠んだ歌である。

 初句「立田山」は、紅葉の名所で、本歌の竜田川の上流の山として置かれる。
 二句「嵐や峰に」の「や」は疑問の係助詞で、三句の「らん」と係り結びをなす。
 三句「弱るらん」の「らん」は現在推量の助動詞「らむ」の連体形で、嵐が峰で弱まったのだろうか、と見えない所を推し量る。ここで句が切れる。
 四句「渡らぬ水も」は、人が渡りもしない川の水も、の意で、本歌の「渡らば」を裏返している。
 結句「錦絶えけり」の「錦」は川面を流れる紅葉の見立てで、「けり」は詠嘆である。本歌が、人が渡れば錦が絶えるとしたのに対し、この歌では誰も渡らないのに錦が絶えたとし、その理由を峰の嵐が弱まって紅葉が散らなくなったことに求める。見えない峰の嵐を、川面の紅葉の途絶えから推し量る理屈の構成である。前歌の第五百二十八首の嵐と紅葉の取り合わせを受け、次の第五百三十二首は逆に嵐が吹いて川波まで紅葉の色に染まると推し量り、嵐の弱まりと強まりによる対をなす。

よわる:勢いが弱くなる
にしき:色糸で模様を織り出した織物。ここでは川面を流れる紅葉の見立て
たゆ:途切れる
作者
宮内卿
出典
新古今和歌集
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