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時わかぬ波さへ色にいづみ川
柞の森に嵐吹くらし

歌の意味
季節の区別なく変わらない川波までもが紅葉の色に染まって現れる泉川よ。柞の森に嵐が吹いているらしい。
鑑賞
巻第五 秋歌下 532

詞書は前の歌に続き「左大将に侍りける時、家に百首歌合し侍りけるに、柞をよみ侍りける」
 紅葉を詠む一連の十首目である。季節を問わず変わらない泉川の波までが紅葉の色に染まるので、柞の森に嵐が吹いているらしいと推し量る。詞書は前の歌に続き、藤原良経の家の百首歌合で「柞」を題として詠まれた。
 作者は藤原俊成の子で、新古今集の撰者の一人であり、のちに権中納言に至った。
 場面は紅葉の散る晩秋、場所は泉川とそのほとりの柞の森である。泉川は山城国を流れる今の木津川で、柞の森はそのほとりにある山城国の歌枕である。
 直接の契機は、藤原良経が左大将であったころに自邸で催した百首歌合、いわゆる六百番歌合への詠進で、「柞」を題として詠まれた。

 初句「時わかぬ」は、季節の区別をしない、の意で、四季を通じて色を変えない川波を示す。
 二句「波さへ色に」の「さへ」は添加の副助詞で、木々だけでなく波までもが紅葉の色に、の意である。
 三句「いづみ川」は、紅葉の色に「出づ」の意と、地名の「泉川」とを掛ける掛詞である。ここで句が切れる。
 四句「柞の森に」は、泉川のほとりの柞の森で、題の「柞」を示す。
 結句「嵐吹くらし」の「らし」は、根拠のある推定の助動詞で、川波の色を根拠に、見えない森に嵐が吹いていると推し量る。嵐が柞の紅葉を散らし、それが川に流れて波までも染めるという因果を、目の前の波の色から逆にたどる構成である。前歌の第五百三十一首とは同じ柞の題で、雫が下草を染める森の内の景と、紅葉が川波を染める森の外の景とを詠み分けている。第五百三十首は川の錦が途絶えたことから嵐の弱まりを推し量っており、本歌の嵐の強まりの推定と対をなす。

ときわく:季節の区別をする
いづみがは:紅葉の色に「出づ」意と、地名の「泉川」を掛ける
作者
藤原定家
出典
新古今和歌集
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