松に這ふまさのはかづら散りにけり
外山の秋は風すさぶらん
- 歌の意味
-
松に這いかかる蔓草の葉が散ってしまった。人里近い外山の秋には、風が荒々しく吹いているのだろう。
- 鑑賞
-
巻第五 秋歌下 538
詞書「題しらず」
紅葉を詠む一連の十六首目である。松に這う蔓草の葉が散ったのを見て、外山の秋には風が荒れて吹いているのだろうと推し量る。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者は俗名を佐藤義清といい、鳥羽院の北面の武士であったが、二十三歳で出家し、諸国を旅して歌を詠んだ。家集に『山家集』がある。
場面は木の葉の散る晩秋、場所は人里に近い外山である。
直接の契機は伝わらない。
初句「松に這ふ」は、松の幹に這いかかる、の意で、常磐木の松に絡む蔓草を示す。
二句「まさのはかづら」は、松などに這いかかる蔓草で、秋に葉が色づき、散るものとして詠まれる。
三句「散りにけり」の「に」は完了の助動詞「ぬ」の連用形、「けり」は詠嘆で、葛の葉が散ってしまったことに気づいた感慨を表す。ここで句が切れる。
四句「外山の秋は」の「外山」は、人里に近い山で、奥深い深山に対していう。
結句「風すさぶらん」の「すさぶ」は、勢いにまかせて荒れる意で、「らん」は現在推量の助動詞「らむ」の終止形である。色を変えない松は残り、そこに這う葛の葉だけが散ったことから、外山を吹く秋風の激しさを推し量る。前歌の第五百三十六首では常磐木までもが紅葉の色に移ろうと見立てたが、本歌では常磐木の松は変わらず、絡む葛だけが散っており、常磐木と紅葉の関係を別の角度から描く。
はふ:這う、這いかかる
とやま:人里に近い山
すさぶ:勢いにまかせて荒れる
- 作者
-
西行
- 出典
-
新古今和歌集
- その他の歌
-