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鶉鳴く交野に立てるはじ紅葉
散りぬばかりに秋風ぞ吹く

歌の意味
鶉の鳴く交野に立っている櫨の紅葉を、今にも散ってしまいそうなほどに、秋風が吹いている。
鑑賞
巻第五 秋歌下 539

詞書「法性寺入道前関白太政大臣家歌合に」
 紅葉を詠む一連の十七首目である。鶉の鳴く交野に立つ櫨の紅葉を、散ってしまいそうなほど秋風が吹くと詠む。詞書によれば、法性寺入道前関白太政大臣藤原忠通の家の歌合で詠まれた。
 作者は平安後期の公卿で、参議に至った。
 場面は紅葉の散りそうな晩秋、場所は交野である。交野は河内国の歌枕で、皇室の狩り場として知られ、鶉の鳴く野として詠まれる。
 直接の契機は、法性寺入道前関白太政大臣藤原忠通の家で催された歌合への詠進である。

 初句「鶉鳴く」は、鶉の鳴く、の意で、交野の景を示す。
 二句「交野に立てる」の「る」は存続の助動詞「り」の連体形で、交野に立っている、の意である。
 三句「はじ紅葉」の「はじ」は櫨の古名で、赤く色づく櫨の紅葉を示す。
 四句「散りぬばかりに」の「ぬ」は完了の助動詞、「ばかり」は程度を表す副助詞で、今にも散ってしまいそうなほどに、の意である。
 結句「秋風ぞ吹く」の「ぞ」は強意の係助詞で、連体形「吹く」で結ぶ。広い交野にひときわ赤い櫨の紅葉が立ち、そこを散らさんばかりに秋風が吹くさまを、鶉の声とともに描く。鶉は本巻の第五百十二首から第五百十四首までに詠まれた鳥で、荒れた野の寂しさを添える。この結句は第四百四十一首、第四百七十一首、第五百三十三首と同じで、本巻を通じて秋風の吹く所を変えながら繰り返される。前歌の第五百三十八首が外山の風を推し量ったのに対し、本歌は野に吹く風を目の前の紅葉に見ている。

うづら:キジ科の鳥。荒れた野に住み、寂しい声で鳴くものとして詠まれる
はじ:櫨の古名。秋に赤く色づく
かたの:河内国の地名。皇室の狩り場として知られる
作者
藤原親隆
出典
新古今和歌集
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