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飛鳥川瀬々に波寄る紅や
葛城山の木枯らしの風

歌の意味
飛鳥川の瀬ごとに波とともに寄せる紅の紅葉よ。それは葛城山の木枯らしの風が散らしたものなのだ。
鑑賞
巻第五 秋歌下 542

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 紅葉を詠む一連の二十首目である。飛鳥川の瀬ごとに寄せる紅の紅葉を、葛城山の木枯らしの風が散らしたものと見る。詞書は前の歌に続いて題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者は平安末期の公卿で、権中納言に至った。
 場面は冬の近づく晩秋、場所は飛鳥川の瀬と、それを望む葛城山である。
 直接の契機は伝わらない。

 初句「飛鳥川」は、前歌の第五百四十一首と同じ初句である。
 二句「瀬々に波寄る」の「瀬々」は、川のあちこちの浅瀬で、波とともに紅葉が寄せるさまを示す。
 三句「紅や」の「紅」は紅葉の鮮やかな赤で、「や」は詠嘆の間投助詞である。紅葉を色の名だけで示している。
 四句「葛城山の」で、紅葉を散らした元の山を示す。
 結句「木枯らしの風」は体言止めで、木の葉を吹き散らす冬の初めの風である。瀬々に寄る紅を、葛城山の木枯らしのしわざとして結句で示す。前歌の第五百四十一首とは飛鳥川と葛城山を共有し、そちらの「山の秋風」を本歌では「木枯らしの風」に替えて、紅葉を散らす風が秋から冬へと移ってゆくことを示している。前歌が紅葉の流れる川から風を推し量ったのに対し、本歌は風を名指して一首を結び、同じ景を別の心の運びで詠み分けている。

せぜ:川のあちこちの浅瀬
くれなゐ:鮮やかな赤色
こがらし:秋の末から冬の初めに吹き、木の葉を散らす強い風
作者
藤原長方
出典
新古今和歌集
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