時雨の雨間なくし降れば真木の葉も
争ひかねて色づきにけり
- 歌の意味
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時雨の雨が絶え間なく降るので、真木の葉も抗いきれずに色づいてしまった。
- 鑑賞
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巻第六 冬歌 582
詞書「題しらず」
時雨を詠む一連の十三首目である。時雨の雨が絶え間なく降るので、真木の葉も抗いきれずに色づいたと詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者は持統天皇、文武天皇の朝廷に仕えた万葉歌人で、後世に歌聖と仰がれ、三十六歌仙の一人である。
場面は時雨の降り続く頃、場所は真木の立つ所である。
直接の契機は伝わらない。
この歌は『万葉集』巻第十に作者を記さずに収められた歌で、『新古今和歌集』では人麿の作として採られている。前歌の第五百八十一首は、この歌を本歌としている。
初句「時雨の雨」は、時雨である雨をいい、六音の字余りである。本巻の第五百七十七首の初句と同じ語である。
二句「間なくし降れば」の「し」は強意の副助詞で、絶え間なく降るので、の意となる。「ば」は已然形に付く順接の確定条件である。
三句「真木の葉も」の「真木」は、杉や檜など良材となる木をいう。「も」によって、ほかの木々に加えて真木の葉までも、という意が添えられる。
四句「争ひかねて」は、抗いきれないで、の意である。時雨と木の葉とが争うかのように擬人化されている。
結句「色づきにけり」は、色づいてしまったことだ、の意で、「に」は完了、「けり」は詠嘆を表す。本巻の第五百七十七首では時雨が槙の下葉を染めかねたのに対し、この歌では時雨が勝って真木の葉が色づいており、時雨と常緑の木の勝ち負けが反転した構図になっている。前歌の後鳥羽院の歌が「間なく」「争ひかねて」の語を取って神杉の行方を問うたのに対し、その本歌であるこの歌は、すでに色づいた結果を示す位置に置かれている。
まき:杉や檜など、良材となる木
あらそひかぬ:抗いきれない
- 作者
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柿本人麻呂
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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