秋篠や外山の里や時雨るらん
生駒の岳に雲のかかれる
- 歌の意味
-
秋篠の外山の里では、今ごろ時雨が降っているのだろうか。生駒の岳に雲がかかっている。
- 鑑賞
-
巻第六 冬歌 585
詞書「題しらず」
時雨を詠む一連の十六首目である。生駒の岳に雲がかかっているのを見て、秋篠の外山の里では時雨が降っているのだろうかと推し量る。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者は俗名を佐藤義清といい、鳥羽院の北面の武士であったが、二十三歳で出家して諸国を旅し、家集『山家集』を残した。
場面は時雨の降る頃、場所は大和国の秋篠と生駒山を望む所である。
直接の契機は伝わらない。
初句「秋篠や」は大和国の地名で、今の奈良市秋篠町のあたりである。「や」は語調を整える間投助詞で、地名を詠嘆的に呼び出す。
二句「外山の里や」の「外山」は、奥山に対して人里に近い山をいう。「や」は疑問の係助詞で、三句の「らん」と呼応する。
三句「時雨るらん」は、時雨が降っているのだろうか、の意で、「らん」は目の前にない事柄を推し量る現在推量の助動詞である。ここで切れる三句切れで、下の句はその根拠を示す倒置の形となる。
四句「生駒の岳に」は、大和国と河内国の境にそびえる生駒山をいう。
結句「雲のかかれる」は、雲がかかっている、の意で、「る」は存続の助動詞「り」の連体形であり、連体形で結んで余情を残す。遠くの山にかかる雲を根拠に見えない里の時雨を推し量る構成で、本巻の第五百七十四首が葛の色から時雨を推し量ったのと同じく、目に見えるものから時雨を知る歌である。次歌の第五百八十六首は、晴れと曇りを定めなく繰り返す時雨を詠む。
とやま:奥山に対して人里に近い山
- 作者
-
西行
- 出典
-
新古今和歌集
- その他の歌
-