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眺めつつ幾たび袖に曇るらん
時雨にふくる有明の月

歌の意味
眺めながら、いったい幾たび袖の涙に映って曇ったことだろう。時雨のなかで夜の更けてゆく有明の月は。
鑑賞
巻第六 冬歌 595

詞書「和歌所にて六首の歌奉りしに冬歌」
 冬の月を詠む一連の五首目である。時雨のなかで夜の更けてゆく有明の月を眺めながら、その月影が幾たび袖の涙に曇ったことだろうと詠む。詞書によれば、和歌所で六首の歌を奉った折の冬の歌である。
 作者は権中納言藤原光隆の子で、『新古今和歌集』の撰者の一人であり、従二位に至って壬生二位と呼ばれた。
 場面は時雨の降る冬の夜更け、場所は有明の月を眺める所である。
 直接の契機は、後鳥羽院が設けた和歌所で六首の歌を詠進した折の、冬の歌としての詠である。

 初句「眺めつつ」は、物思いにふけって見やりながら、の意で、「つつ」は継続を表す。
 二句「幾たび袖に」は、いったい幾たび袖に、の意で、月の光が涙に濡れた袖に映ることをいう。
 三句「曇るらん」は、曇ったことだろう、の意で、「らん」は推量の助動詞である。月そのものではなく、袖の涙に映る月影が曇ることをいい、ここで切れる三句切れで、下の句とは倒置の関係になる。
 四句「時雨にふくる」は、時雨のなかで夜が更けてゆく、の意である。時雨の雲によって空の月も曇りがちになることが示される。
 結句「有明の月」は体言止めで、前歌と同じ結句である。前歌では霜の凍る袖に有明の月の光が残ったのに対し、この歌では時雨と涙によって袖の月影が曇っており、同じ有明の月と袖の取り合わせで、光の残る袖と曇る袖とが対になっている。

ふく:夜が更ける
わかどころ:後鳥羽院が和歌の撰集などのために院の御所に設けた役所
作者
藤原家隆
出典
新古今和歌集
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