風寒み木の葉晴れゆく夜な夜なに
残る隈なき庭の月影
- 歌の意味
-
風が寒いので木の葉が散って木々の間が晴れてゆく夜ごとに、陰となって残る所もなく照らす庭の月の光よ。
- 鑑賞
-
巻第六 冬歌 605
詞書「題しらず」
冬の月を詠む一連の十五首目である。風が寒く木の葉が散ってゆく夜ごとに、庭の月の光が隈なく差すようになると詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者は後白河天皇の皇女で、賀茂斎院を務め、藤原俊成に和歌を学んだ。
場面は寒風の吹く冬の夜々、場所は月の光の差す庭である。
直接の契機は伝わらない。
初句「風寒み」は、風が寒いので、の意で、「〜み」は原因、理由を表す語法である。
二句「木の葉晴れゆく」は、木の葉が散って木々の間が晴れてゆく、の意である。本巻の第六百三首の「梢に晴るる」と同じく、落葉を「晴る」の語で捉えている。
三句「夜な夜なに」は、夜ごとに、の意で、日を追って木の葉が減ってゆく時の経過を示す。
四句「残る隈なき」は、陰となって残る所もない、の意である。木の葉がなくなるにつれて、月の光の届かない陰も残らなくなることをいう。
結句「庭の月影」は体言止めで、庭に差す月の光をいう。夜ごとに少しずつ明るさを増す庭の月を、木の葉の減少と重ねて描いており、本巻の第五百九十二首から続く落葉と月の取り合わせを、一夜ではなく幾夜にもわたる推移として詠んでいる。本巻の第五百七十一首が木の葉の散り果てた庭に風の音を聞いたのに対し、この歌は同じ庭に隈なく差す月の光を見ている。
くま:光の届かない陰の部分
つきかげ:月の光
- 作者
-
式子内親王
- 出典
-
新古今和歌集
- その他の歌
-