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影とめし露の宿りを思ひ出でて
霜に跡とふ浅茅生の月

歌の意味
かつて自らの光をとどめて宿った露のすみかを思い出して、今は霜の上にその跡を訪ねる浅茅生の月よ。
鑑賞
巻第六 冬歌 610

詞書「五十首歌奉りし時」
 冬の月を詠む一連の二十首目である。光を宿した浅茅の露を思い出して、冬には霜の上にその跡を訪ねる月を詠む。詞書によれば、五十首歌を奉った時の歌である。
 作者は刑部卿藤原頼経の子で、蹴鞠と和歌の家である飛鳥井家の祖となった。『新古今和歌集』の撰者の一人である。
 場面は霜の置いた冬の夜、場所は浅茅の生い茂る所である。
 直接の契機は五十首歌の詠進である。詞書には、どの催しでの五十首であるかは記されていない。

 初句「影とめし」は、光をとどめて宿した、の意で、「し」は過去の助動詞「き」の連体形である。露に月の光が映って宿ったことをいう。
 二句「露の宿りを」は、露という宿りを、の意で、月が宿った露を宿として表している。
 三句「思ひ出でて」は、思い出して、の意で、月を擬人化している。
 四句「霜に跡とふ」は、霜の上に、露の宿りの跡を訪ねる、の意である。露が霜に変わった後も、月はかつての宿りの跡を訪ねて霜を照らす。
 結句「浅茅生の月」は体言止めで、浅茅の生い茂る所に照る月をいう。本巻の第五百九十四首が「露より馴れし有明の月」と、露の頃から馴れた月が霜の袖に残ると詠んだのと同じく、露から霜への推移を月の光によって捉えている。前歌までの寝所の月から、浅茅生の月へと場が移っている。

やどり:宿る所、すみか
とふ:訪ねる
あさぢふ:浅茅が一面に生えている所
作者
藤原雅経
出典
新古今和歌集
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