片敷きの袖をや霜に重ぬらん
月に夜がるる宇治の橋姫
- 歌の意味
-
独り寝の片敷きの袖を、霜に重ねているのだろうか。月の夜にも訪れる人の途絶えた宇治の橋姫は。
- 鑑賞
-
巻第六 冬歌 611
詞書「橋上霜といへることをよみ侍りける」
霜と冬枯れを詠む一連の一首目である。月の夜にも訪れの途絶えた宇治の橋姫が、独り寝の片敷きの袖に霜を重ねているのだろうかと思いやる。詞書によれば、「橋上霜」の題で詠まれた歌である。
作者は法印の位にあった僧である。「法印」は僧位の最高位である。
場面は霜の置く冬の月夜、場所は山城国の宇治橋である。
直接の契機は「橋上霜」(橋の上の霜)の題による詠である。
宇治の橋姫は宇治橋を守る女神とされ、『古今和歌集』のよみ人しらずの歌「さむしろに衣かたしき今宵もや我を待つらむ宇治の橋姫」以来、恋人を待って独り寝をする女性の姿で詠まれてきた。
初句「片敷きの」は、衣の片袖だけを敷いて独り寝をすることをいう。本巻の第六百九首の「袖の片敷き」を受け、独り寝の袖が続けて詠まれている。
二句「袖をや霜に」の「や」は疑問の係助詞で、三句の「らん」と呼応する。
三句「重ぬらん」は、重ねているのだろうか、の意で、「らん」は現在推量の助動詞の連体形である。独り寝の袖の上に霜を重ねているかと推し量り、題の「霜」を示す。ここで切れる三句切れで、下の句とは倒置の関係になる。
四句「月に夜がるる」の「夜がる」は、男の訪れが夜ごとに途絶える意である。月の明るい夜にさえ訪れのないことをいう。
結句「宇治の橋姫」は体言止めで、題の「橋上」を示す。巻第四の第四百二十首に「月をかたしく宇治の橋姫」と詠まれた秋の橋姫が、ここでは霜を重ねる冬の橋姫として詠まれており、月と片敷きの取り合わせが秋から冬へと移されている。
かたしき:衣の片袖だけを敷いて独り寝をすること
よがる:男の訪れが途絶える
はしひめ:橋を守る女神、特に宇治橋の橋姫
- 作者
-
幸清
- 出典
-
新古今和歌集
- その他の歌
-