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時雨れつつ枯れゆく野辺の花なれば
霜の籬ににほふ色かな

歌の意味
時雨が降り続くたびに枯れてゆく野辺の花であるから、霜の置く籬に照り映えるこの色がいっそう際立つことよ。
鑑賞
巻第六 冬歌 621

詞書「上の男ども菊合し侍りけるついでに」
 霜と冬枯れを詠む一連の十一首目である。時雨に枯れてゆく野辺の花に対して、霜の置く籬に照り映える菊の色を詠む。詞書によれば、殿上人たちが菊合を催した折の歌である。
 作者は宇多天皇の皇子で、その治世は延喜の治と称えられ、紀貫之らに命じて『古今和歌集』を撰進させた。
 場面は霜の置く頃、場所は菊の咲く宮中の籬である。
 直接の契機は、殿上人たちが菊を持ち寄って優劣を競った菊合の折の詠である。

 初句「時雨れつつ」は、時雨が繰り返し降る意で、本巻の第五百八十三首の三句と同じ語である。
 二句「枯れゆく野辺の」は、しだいに枯れてゆく野辺の、の意である。時雨の降るたびに草花の枯れてゆくさまを示す。
 三句「花なれば」は、花であるから、の意で、「ば」は已然形に付く順接の確定条件である。野辺の花は時雨のたびに枯れてゆくものであるという前提を示す。
 四句「霜の籬に」は、霜の置いた籬に、の意で、「籬」は竹や柴を粗く編んだ垣をいう。
 結句「にほふ色かな」は、美しく照り映える色であることよ、の意で、詠嘆の終助詞「かな」で結ぶ。野辺の花が枯れてゆくのに対し、籬の菊は霜の中でなお色を映しているという対比によって、菊合の菊を称えている。次歌の第六百二十二首、第六百二十三首とともに、延喜の御代の霜と菊を詠む三首がここに並べられている。

うへのをのこ:殿上の間に昇ることを許された男性官人、殿上人
きくあはせ:菊を持ち寄って優劣を競う催し
まがき:竹や柴などを粗く編んだ垣
にほふ:色が美しく照り映える
作者
醍醐天皇
出典
新古今和歌集
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