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菊の花手折りては見じ初霜の
置きながらこそ色まさりけれ

歌の意味
菊の花は、手折って見ることはすまい。初霜が置いたままであってこそ、色がいっそうまさるのだから。
鑑賞
巻第六 冬歌 622

詞書「延喜十四年、尚侍藤原満子に菊宴賜はせける時」
 霜と冬枯れを詠む一連の十二首目である。菊の花は初霜が置いたままでこそ色がまさるので、手折っては見まいと詠む。詞書によれば、延喜十四年に醍醐天皇が尚侍藤原満子に菊の宴を賜った折の歌である。
 作者は藤原利基の子で、従三位中納言に至り、賀茂川の堤に邸があったことから堤中納言と呼ばれた。紫式部の曾祖父で、三十六歌仙の一人である。
 場面は初霜の置く頃、場所は菊の宴の催された宮中である。
 直接の契機は、延喜十四年に醍醐天皇が尚侍藤原満子に菊の宴を賜った折の詠である。「尚侍」は内侍司の長官で、藤原満子は内大臣藤原高藤の娘である。
 なお本文の二句は「たおりては見し」とあり、濁点がないため「見し」とも「見じ」とも読めるが、下の句の意に従い、打消意志の「見じ」と解する。

 初句「菊の花」は、宴に供された菊の花をいう。
 二句「手折りては見じ」は、手折って見ることはすまい、の意で、「じ」は打消意志の助動詞である。ここで切れる二句切れである。
 三句「初霜の」は、その年初めて置く霜をいい、四句の「置き」にかかる。
 四句「置きながらこそ」は、霜が置いたままであってこそ、の意で、係助詞「こそ」が強く取り立てる。
 結句「色まさりけれ」は、色がまさるのであった、の意で、係助詞「こそ」を受けて過去の助動詞「けり」の已然形「けれ」で結ぶ係り結びである。霜にあって色の変わってゆく菊を賞美する当時の好みに立ち、手折って霜を払うよりも、霜を置いたままの姿を見るべきだとする歌である。前歌の霜の籬に照り映える菊を受け、霜と菊の取り合わせが続いている。

たをる:手で折り取る
はつしも:その年初めて置く霜
ないしのかみ:内侍司の長官、尚侍
作者
藤原兼輔
出典
新古今和歌集
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