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昔思ふ小夜の寝覚めの床冴えて
涙も凍る袖の上かな

歌の意味
昔を思って夜中に目覚めた寝床は冷え冷えとして、流す涙までも凍る袖の上であることよ。
鑑賞
巻第六 冬歌 629

詞書「冬歌とてよみ侍りける」
 氷を詠む一連の一首目である。昔を思って夜中に目覚めた寝床は冷え込み、流す涙までも袖の上で凍ると詠む。詞書によれば、冬の歌として詠まれた歌である。
 作者は後白河天皇の皇子で、仁和寺に入って門跡となり、御室と呼ばれた。
 場面は冬の夜更け、場所は寝覚めの寝所である。
 直接の契機は、冬の歌として詠まれたことである。

 初句「昔思ふ」は、過ぎ去った昔を思う、の意である。巻第三の第二百一首も「昔思ふ」と詠み出して夜の涙を詠んでおり、昔を思う夜の涙を詠む歌の言い出しとなっている。
 二句「小夜の寝覚めの」は、夜中にふと目覚めた、の意で、「さ」は語調を整える接頭語である。
 三句「床冴えて」は、寝床が冷え込んで、の意である。
 四句「涙も凍る」は、流す涙までも凍る、の意で、「も」によって、霜や水だけでなく涙までも、という意が添えられる。
 結句「袖の上かな」は、詠嘆の終助詞「かな」で結ぶ。昔を思って流す涙が、冬の夜の寒さのために袖の上で凍るという歌で、霜と冬枯れの一連から氷の一連へと移る位置にある。本巻の第六百一首が月を見るうちに袖が凍ったと詠んだのに対し、この歌は昔を思う涙が凍るとしており、袖の凍る理由が月から昔の思い出へと移されている。

ねざめ:夜中にふと目が覚めること
さゆ:冷え込む
作者
守覚法親王
出典
新古今和歌集
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