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かつ凍りかつは砕くる山川の
岩間にむせぶ暁の声

歌の意味
一方では凍り、一方では砕けて流れる山川の、岩の間にむせび泣くような暁の水音よ。
鑑賞
巻第六 冬歌 631

詞書「題しらず」
 氷を詠む一連の三首目である。凍っては砕けて流れる山川の、岩間にむせぶような暁の水音を詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者は権中納言藤原俊忠の子で、正三位皇太后宮大夫に至り、出家して釈阿と号した。『千載和歌集』を撰進し、藤原定家の父である。
 場面は冬の暁、場所は岩の間を流れる山川である。
 直接の契機は伝わらない。

 初句「かつ凍り」の「かつ」は、一方では、の意で、二句の「かつは」と呼応して、二つのことが同時に起こるさまを示す。
 二句「かつは砕くる」は、一方では砕ける、の意である。凍りかけた氷が水の勢いで砕けてゆくさまをいう。
 三句「山川の」は、山の中を流れる川の、の意である。
 四句「岩間にむせぶ」は、岩の間でむせび泣くように音を立てる、の意である。氷にせかれて流れの音がくぐもるさまを、むせび泣きになぞらえている。
 結句「暁の声」は体言止めで、暁に聞こえる川の音をいう。凍ることと砕けることとが同時に起こる流れを、目ではなく暁の音によって捉えている。前歌が雫の音の絶えたことで凍りを知ったのに対し、この歌は凍りかけてむせぶ音を聞いており、音の途絶えと音のくぐもりとが並べられている。

やまがは:山の中を流れる川
むせぶ:声を詰まらせて泣く、またそのような音を立てる
作者
藤原俊成
出典
新古今和歌集
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