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行く先は小夜更けぬれど千鳥鳴く
佐保の河原は過ぎ憂かりけり

歌の意味
行く先の道は夜も更けてしまったけれども、千鳥の鳴く佐保の河原は、通り過ぎるのがつらいことであった。
鑑賞
巻第六 冬歌 642

詞書「佐保の河原に千鳥の鳴きけるをよみ侍りける」
 千鳥を詠む一連の二首目である。夜は更けてしまったが、千鳥の鳴く佐保の河原は心ひかれて通り過ぎがたいと詠む。詞書によれば、佐保の河原で千鳥の鳴くのを聞いて詠んだ歌である。
 作者は祭主大中臣輔親の娘で、中宮彰子に仕え、奈良から献上された八重桜を詠んだ歌で知られる。
 場面は夜更け、場所は大和国の佐保川の河原である。
 直接の契機は、佐保の河原で千鳥の鳴く声を聞いたことである。

 初句「行く先は」は、これから向かう先は、の意である。
 二句「小夜更けぬれど」は、夜が更けてしまったけれど、の意で、「ぬれ」は完了の助動詞「ぬ」の已然形、「ど」は逆接の接続助詞である。先を急ぐべき時であることを示す。
 三句「千鳥鳴く」は、四句の「佐保の河原」にかかる。
 四句「佐保の河原は」は大和国の歌枕で、奈良の都の北を流れる佐保川の河原をいう。千鳥の名所として詠まれてきた。
 結句「過ぎ憂かりけり」は、通り過ぎるのがつらいことだ、の意で、「憂し」は、…しづらい意を添え、「けり」は気づきの詠嘆を表す。夜更けの道を急ぐべきなのに、千鳥の声に心ひかれて立ち去りがたいという心を詠んでいる。前歌が河原に鳴く千鳥の声を聞いたのに続き、この歌はその声に足をとめる旅人の心を詠んでいる。

すぐ:通り過ぎる
作者
伊勢大輔
出典
新古今和歌集
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