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夕されば潮風越して陸奥の
野田の玉川千鳥鳴くなり

歌の意味
夕方になると、潮風が吹き越してきて、陸奥の野田の玉川に千鳥の鳴く声がする。
鑑賞
巻第六 冬歌 643

詞書「陸奥国にまかりける時よみ侍りける」
 千鳥を詠む一連の三首目である。夕方になると潮風が吹き越して、陸奥の野田の玉川に千鳥の鳴く声がすると詠む。詞書によれば、陸奥国に下った時に詠んだ歌である。
 作者は俗名を橘永愷といい、若くして出家し、諸国の歌枕を訪ねて旅をした。歌学書『能因歌枕』を著した。
 場面は夕暮れ、場所は陸奥国の野田の玉川である。
 直接の契機は、陸奥国に下った折に、野田の玉川で千鳥の声を聞いたことである。

 初句「夕されば」は、夕方になると、の意である。
 二句「潮風越して」は、海から吹く潮風が吹き越してきて、の意である。
 三句「陸奥の」は、四句の「野田の玉川」のある国を示す。
 四句「野田の玉川」は陸奥国の歌枕で、今の宮城県塩竈市のあたりを流れる川である。
 結句「千鳥鳴くなり」の「なり」は、音によって推し量る伝聞推定の助動詞で、本巻の第六百四十一首と同じ結句である。夕べの潮風に乗って聞こえる千鳥の声を詠み、実際に陸奥に下った作者が、遠国の歌枕の景を声によって捉えている。前歌の大和の佐保の河原から遠い陸奥の玉川へと場が移り、河原の千鳥から海に近い川の千鳥へと続いている。

ゆふさる:夕方になる
しほかぜ:海から吹く潮気を含んだ風
作者
能因
出典
新古今和歌集
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