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風吹けばよそになるみのかたおもひ
思はぬ波に鳴く千鳥かな

歌の意味
風が吹くと、鳴海潟からよそへ隔てられる身となり、潟を一方的に慕う片思いのまま、思いもかけない波に鳴く千鳥であることよ。
鑑賞
巻第六 冬歌 649

詞書「最勝四天王院の障子に鳴海の浦描きたる所」
 千鳥を詠む一連の九首目である。風に吹かれて鳴海潟を離れ、潟を慕う片思いのまま、思いもかけない波に鳴く千鳥を詠む。詞書によれば、最勝四天王院の障子に鳴海の浦を描いた絵に添えた歌である。
 作者は藤原秀宗の子で、後鳥羽院に北面の武士として仕え、承久の乱ののちに出家して如願と号した。
 場面は風の吹く頃、場所は尾張国の鳴海の浦である。
 直接の契機は、最勝四天王院の障子に描かれた鳴海の浦の名所絵に添えるための詠である。

 初句「風吹けば」は、風が吹くと、の意で、「ば」は已然形に付く確定条件である。
 二句「よそになるみの」の「なる」には、よそに「なる身」の意と、地名の「鳴海」が掛けられている。風に吹かれて潟から隔てられ、よそにいる身となることをいう。
 三句「かたおもひ」の「かた」には、干潟の「潟」の意と、「片思ひ」の「片」の意が掛けられている。「鳴海潟」から続き、潟を慕う千鳥の片思いの心を表す。
 四句「思はぬ波に」は、思いもかけない波に、の意で、三句の「かたおもひ」と呼応して、こちらを思ってくれない波の意も込められている。
 結句「鳴く千鳥かな」は、詠嘆の終助詞「かな」で結ぶ。鳴海潟を離れる千鳥の姿を、恋しい相手から隔てられた片思いの人になぞらえ、掛詞を重ねて恋歌の趣を冬の景に持ち込んでいる。前歌が潮の満ちる鳴海潟に近づく千鳥の声を詠んだのに対し、この歌は風と波に潟から隔てられる千鳥を詠み、近づく千鳥と遠ざかる千鳥とが対になっている。

なるみ:よそに「なる身」の意と、地名の鳴海を掛ける
かた:干潟の「潟」の意と、「片思ひ」の「片」の意を掛ける
作者
藤原秀能
出典
新古今和歌集
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