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風冴ゆるとしまが磯のむら千鳥
立ち居は波の心なりけり

歌の意味
風の冷たく冴える、としまが磯の群れ千鳥よ。その飛び立ったりとまったりするのは、寄せては返す波の心しだいなのであった。
鑑賞
巻第六 冬歌 651

詞書「文治六年女御入内屏風に」
 千鳥を詠む一連の十一首目で、この一連の終わりの歌である。風の冷たい磯に群れる千鳥が飛び立ったりとまったりするのは、波の心しだいであったと詠む。詞書によれば、文治六年の女御入内の屏風に添えた歌である。
 作者は左京大夫藤原顕輔の子で、六条藤家の歌人として活躍し、正三位に至った。
 場面は風の冷たい冬、場所は磯である。
 直接の契機は、文治六年に九条兼実の娘任子が後鳥羽天皇の女御として入内した際に調えられた屏風に、歌を添えるための詠である。

 初句「風冴ゆる」は、風が冷たく冴える、の意である。
 二句「としまが磯の」は、としまという所の磯の、の意である。
 三句「むら千鳥」は、群れをなす千鳥をいう。本巻の第六百四十七首の「ひとり鳴く」千鳥に対し、ここでは群れる千鳥が詠まれている。
 四句「立ち居は」は、飛び立ったりとまったりすることは、の意である。
 結句「波の心なりけり」は、寄せては返す波の心しだいであった、の意で、「けり」は気づきの詠嘆を表す。波が寄せるたびに飛び立ち、引くたびに降りる千鳥のさまを、千鳥の立ち居が波の心に従っていると見立て、波を擬人化している。前歌までの鳴海の千鳥から磯の群れ千鳥へと移り、千鳥の一連を結んでいる。

むらちどり:群れをなしている千鳥
たちゐ:立つことと座ること、ここでは飛び立ったりとまったりすること
にようご:天皇の后妃の位の一つ
作者
藤原季経
出典
新古今和歌集
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