水鳥の鴨のうきねのうきながら
波の枕に幾夜寝ぬらん
- 歌の意味
-
水鳥の鴨が水に浮いて寝るように、つらい思いを抱きながら、波を枕にして幾夜寝たことだろう。
- 鑑賞
-
巻第六 冬歌 653
詞書「堀河院に百首歌奉りけるに」
水鳥を詠む一連の二首目である。水に浮いて寝る鴨のように、つらい思いを抱きながら波を枕に幾夜寝たことだろうと詠む。詞書によれば、堀河院に百首歌を奉った折の歌である。
作者は「河内」と呼ばれた女房で、誰を指すかについて定説を見ない。「河内」は国名を用いた女房名である。
場面は冬の夜、場所は鴨の浮かぶ水辺である。
直接の契機は、堀河天皇に奉った百首歌、いわゆる堀河百首での詠である。
初句「水鳥の」は、二句の「鴨」を修飾する。
二句「鴨のうきねの」の「うきね」は、水鳥が水に浮いたまま寝ることをいう。「の」は比喩を表し、鴨の浮き寝のように、の意で三句へ続く。
三句「うきながら」の「うき」には、「浮き」の意と、つらい意の「憂き」が掛けられている。二句の「うきね」の「うき」を重ね、浮き寝の「浮き」から「憂き」へと意を移している。
四句「波の枕に」は、波を枕として、の意で、水上で寝る鴨のさまを示す。
結句「幾夜寝ぬらん」は、幾夜寝たことだろう、の意で、「ぬ」は完了の助動詞、「らん」は推量の助動詞である。鴨の浮き寝に、つらい思いを抱いて独り寝る身を重ねた歌である。前歌が鴛の独り寝を詠んだのに続き、この歌は鴨の浮き寝を詠み、水鳥の寝る姿に人の独り寝の嘆きを託す点で並んでいる。次歌の第六百五十四首も、川淀に鳴く鴨を詠んでいる。
うきね:水鳥が水に浮いたまま寝ること
うきながら:浮きながらの意と、つらく思いながらの意を掛ける
- 作者
-
河内
- 出典
-
新古今和歌集
- その他の歌
-