矢田の野に浅茅色づくあらち山
峰の淡雪寒くぞあるらし
- 歌の意味
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矢田の野では浅茅が色づいている。あらち山の峰に降る淡雪は、さぞ寒いことであるらしい。
- 鑑賞
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巻第六 冬歌 657
詞書は前の歌に続き「題しらず」
雪を詠む一連の一首目である。矢田の野の浅茅が色づいたのを見て、あらち山の峰の淡雪はさぞ寒いのだろうと推し量る。詞書は前歌から続き題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者は持統天皇、文武天皇の朝廷に仕えた万葉歌人で、後世に歌聖と仰がれ、三十六歌仙の一人である。
場面は浅茅の色づく冬の初め、場所は矢田の野とあらち山である。
直接の契機は伝わらない。
この歌は『万葉集』巻第十に作者を記さずに収められた歌で、『新古今和歌集』では人麿の作として採られている。
初句「矢田の野に」は、矢田の野で、の意である。
二句「浅茅色づく」は、丈の低い茅が色づく、の意である。ここで切れる二句切れである。
三句「あらち山」は越前国の歌枕で、越前と近江の境にある愛発山をいう。
四句「峰の淡雪」は、峰に降る淡雪をいう。
結句「寒くぞあるらし」は、係助詞「ぞ」を受けて推定の助動詞「らし」で結び、寒いのであるらしい、の意となる。「らし」は根拠に基づいて推し量る助動詞で、目の前の野の浅茅が色づいたことを根拠に、遠い山の峰の雪の寒さを推し量る構成である。前歌が唐崎の風の冷たさから比良の高嶺の霰を推し量ったのと同じく、近景から遠景の冬を知る歌が続き、霰の一連から雪の一連へと移っている。
あさぢ:丈の低い茅
あはゆき:泡のように消えやすい、柔らかな雪
- 作者
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柿本人麻呂
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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