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初雪のふるの神杉埋もれて
標結ふ野辺は冬ごもりせり

歌の意味
初雪の降る布留の神杉は雪に埋もれて、標縄を張りめぐらした野辺は、冬ごもりをしている。
鑑賞
巻第六 冬歌 660

詞書「冬歌あまたよみ侍りけるに」
 雪を詠む一連の四首目である。初雪の降る布留の神杉は雪に埋もれ、標縄を張った野辺は冬ごもりをしていると詠む。詞書によれば、冬の歌を数多く詠んだ折の歌である。
 作者は藤原顕長の子で、権中納言に至った。
 場面は初雪の降る冬、場所は大和国の石上の布留である。
 直接の契機は、冬の歌を数多く詠んだ折の詠である。

 初句「初雪の」は、その冬初めて降る雪の、の意で、二句の「ふる」にかかる。
 二句「ふるの神杉」の「ふる」には、初雪が「降る」意と、大和国の歌枕である石上の「布留」が掛けられている。布留は今の奈良県天理市の石上神宮のあたりで、神の宿る杉が詠まれてきた。本巻の第五百八十一首の結句「ふるの神杉」と同じ語である。
 三句「埋もれて」は、雪に埋もれて、の意である。前歌までの篠屋の軒の埋もれから、神杉の埋もれへと移っている。
 四句「標結ふ野辺は」は、神域を示す標縄を張りめぐらした野辺は、の意である。
 結句「冬ごもりせり」は、冬ごもりをしている、の意で、「り」は存続の助動詞である。雪に覆われた神域の野辺を、生き物が冬の間こもるように冬ごもりしていると擬人化している。本巻の第五百八十一首が時雨に争いかねる布留の神杉の緑の行方を問うたのに対し、この歌では同じ神杉が初雪に埋もれており、時雨から雪へと移る冬の推移が、同じ布留の神杉の上に示されている。

ふる:初雪が降る意と、地名の布留を掛ける
かみすぎ:神社などにある、神の宿る杉
しめ:神域などを示すために張る縄
ふゆごもり:冬の間、家や巣にこもって過ごすこと
作者
藤原長方
出典
新古今和歌集
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