今ぞ聞く心は跡もなかりけり
雪かき分けて思ひやれども
- 歌の意味
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今こそ聞いて知りました。心というものは跡も残らないのでした。雪をかき分けてあなたのもとへと思いを馳せていたのですけれど。
- 鑑賞
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巻第六 冬歌 665
詞書「返し」
雪を詠む一連の九首目である。前歌の俊成の歌に答え、雪をかき分けて思いを馳せていたが、心は足跡を残さないものだったと今知ったと詠む。詞書によれば、前歌に対する返しの歌である。
作者は右大臣藤原公能の子で、左大臣に至った。徳大寺左大臣と呼ばれた祖父藤原実能に対して、後徳大寺左大臣と呼ばれた。
場面は雪の朝、場所は作者の住まいである。
直接の契機は、雪の朝に叔父の藤原俊成から送られてきた前歌の第六百六十四首への返しである。
初句「今ぞ聞く」は、係助詞「ぞ」を受けて動詞「聞く」の連体形で結ぶ係り結びで、今こそ聞いて知った、の意となる。ここで切れる初句切れである。
二句「心は跡も」は、心というものは跡も、の意で、前歌の「まだ跡もなき」の「跡」を受けている。
三句「なかりけり」は、残らないものだったのだ、の意で、「けり」は気づきの詠嘆を表す。ここで再び切れる。
四句「雪かき分けて」は、雪をかき分けて、の意である。
結句「思ひやれども」は、思いを馳せて行くけれども、の意で、「ども」は逆接の接続助詞であり、三句とは倒置の関係になる。前歌の足跡もないという恨みに対し、心では雪をかき分けて何度も訪ねていたが、心は足跡を残さないので気づいてもらえなかったのだと、機知によって答えている。前歌の「跡」の語をそのまま受けて切り返す贈答の形で、本巻の第六百五十八首と第六百五十九首の贈答と並び、雪の朝の二組の贈答が置かれている。
かきわく:かき分ける
おもひやる:遠く離れた人や所に思いを馳せる
- 作者
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藤原実定
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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