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なかなかに消えは消えなで埋み火の
生きてかひなき世にもある哉

歌の意味
いっそ消えるならば消えてしまえばよいものを、消えもしないで、灰に埋もれた炭火のように、生きていてもかいのない世に、なお生きていることよ。
鑑賞
巻第六 冬歌 689

詞書「埋み火をよみ侍りける」
 埋み火と炭竈を詠む一連の一首目である。いっそ消えればよいのに消えもせず、灰に埋もれた炭火のように、生きていてもかいのない世に生きていると嘆く。詞書によれば、埋み火を題として詠んだ歌である。
 作者は興福寺の僧で、権僧正に至った。ほととぎすを詠んだ歌が名高く、初音の僧正と呼ばれた。
 場面は冬の夜、場所は埋み火のある炉のそばである。
 直接の契機は「埋み火」の題による詠である。

 初句「なかなかに」は、かえって、いっそのこと、の意である。
 二句「消えは消えなで」は、消えるならば消えてしまえばよいのに、消えもしないで、の意で、「なで」は完了の助動詞「ぬ」の未然形「な」に打消の接続助詞「で」が付いたものである。
 三句「埋み火の」は、灰に埋めて火種を保つ炭火の、の意で、「の」は比喩を表し、埋み火のように、の意で四句へ続く。
 四句「生きてかひなき」は、生きていても何のかいもない、の意である。二句の「消え」と四句の「生き」とは、埋み火の縁語として、火が消える、火が生きる意を重ねている。
 結句「世にもある哉」は、世にもなお生きていることよ、の意で、「哉」は詠嘆の終助詞である。燃え上がることもなく消えることもなく、灰の下でかすかに命をつなぐ埋み火に、生きるかいもなく生き長らえる我が身を重ねて嘆く歌である。前歌までの冬の狩の華やかな景から、冬の夜の炉の埋み火に託した身の嘆きへと移っている。

うづみび:灰に埋めて火種を保つ炭火
作者
永縁
出典
新古今和歌集
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