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行く年ををしまの海人の濡れ衣
重ねて袖に波やかくらん

歌の意味
過ぎゆく年を惜しむ、その雄島の海人の濡れ衣のように、年を重ねるうえに、さらに袖に涙の波をかけるのだろうか。
鑑賞
巻第六 冬歌 704

詞書「土御門内大臣家にて海辺歳暮といへる心をよめる」
 歳暮を詠む一連の十四首目である。過ぎゆく年を惜しんで、雄島の海人の濡れ衣のように、年を重ねるうえに袖に涙の波をかけるのだろうかと詠む。詞書によれば、土御門内大臣源通親の家で、「海辺歳暮」の題で詠んだ歌である。
 作者は藤原重家の子で、六条藤家の歌人であり、『新古今和歌集』の撰者の一人である。
 場面は年の暮れ、場所は陸奥国の雄島の海辺である。
 直接の契機は、土御門内大臣源通親の家での「海辺歳暮」(海辺の歳暮)の題による詠である。

 初句「行く年を」は、過ぎ去ってゆく年を、の意である。
 二句「をしまの海人の」の「をしま」には、行く年を「惜しま」の意と、陸奥国の歌枕である「雄島」が掛けられている。雄島は今の宮城県の松島にある島で、海人の住む所として詠まれてきた。
 三句「濡れ衣」は、海人の潮に濡れた衣をいい、ここで切れる三句切れである。題の「海辺」を示す。
 四句「重ねて袖に」の「重ね」は、濡れ衣を重ねる意と、年を重ねる意を兼ねており、さらに重ねて袖に、の意となる。
 結句「波やかくらん」は、疑問の係助詞「や」を受けて推量の助動詞「らん」の連体形で結び、波をかけるのだろうか、と推し量る。海人の濡れ衣に波がかかるように、年を惜しむ我が袖にも涙の波がかかるという見立てで、題の「歳暮」を海辺の景に託して詠んでいる。前歌の初瀬川の流れの速さから、海辺の波へと水の景が移り、次歌の第七百五首も同じ題で、波の越える末の松山を詠んでいる。

をしま:行く年を惜しむ意と、地名の雄島を掛ける
あま:漁をして暮らす人
ぬれぎぬ:濡れた衣
作者
藤原有家
出典
新古今和歌集
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