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山河の菊の下水いかなれば
流れて人の老いをせくらん

歌の意味
山の川の、菊の下を流れる水は、どういうわけで、流れていながら人の老いをせき止めるのだろう。
鑑賞
巻第七 賀歌 717

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 菊を詠む一連の一首目である。山川の菊の下を流れる水が、流れながらどうして人の老いをせき止めるのかと詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者は平安時代前期の人で、相模掾、上野権大掾、下総権大掾などの地方官を務めた。三十六歌仙の一人である。
 場面は菊の咲く秋、場所は菊の生える山中の川辺である。
 直接の契機は伝わらない。
 歌の背景には、中国の南陽郡酈県で、菊の露が滴る谷川の水を飲む人々が長寿を保ったという菊水の故事がある。

 初句「山河の」は、山の中を流れる川の、の意である。菊の生える奥深い谷川の景が示される。
 二句「菊の下水」は、菊の下を流れる水の意である。菊水の故事を踏まえ、長寿をもたらす水として詠まれる。
 三句「いかなれば」は、どういうわけで、の意の疑問で、結句の推量「らん」と呼応する。
 四句「流れて人の」の「流れて」は、水が流れて、の意である。流れ去るものが結句の「せく」と逆の働きをする点に、理屈の面白さがある。
 結句「老いをせくらん」の「せく」は、流れをせき止める意で、「水」「流れて」と縁語をなす。流れる水が老いをせき止めるという矛盾を「いかなれば」と問いかけ、菊水の効き目を理屈で言い立てる。次歌の第七百十八首は長月の菊を詠み、菊に寄せた長寿の歌が続く。

したみづ:物の下を流れる水
せく:流れをせき止める
きくすい:菊の露が滴る水。飲めば長寿を保つとされた
作者
藤原興風
出典
新古今和歌集
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