古典和歌stream

あかねさす朝日の里の日蔭草
豊の明かりのかざしなるべし

歌の意味
朝日の里に生える日蔭草は、豊明の節会のかざしとなるにちがいない。
鑑賞
巻第七 賀歌 748

詞書「長和五年大嘗会悠紀方風俗歌近江国朝日郷」
 大嘗会の歌の一連の二首目である。朝日の里の日蔭草は、豊明の節会のかざしとなるだろうと詠む。詞書によれば、長和五年の大嘗会で悠紀の国となった近江国の朝日郷を詠んだ風俗歌である。
 作者は大中臣能宣の子で、伊勢神宮の祭主を務めた。
 場面は長和五年の大嘗会、場所は近江国の朝日郷である。
 直接の契機は、長和五年(1016)、後一条天皇の大嘗会で悠紀の国に定められた近江国の地名を詠んだことである。
 豊明の節会は、大嘗会や新嘗祭の最後に行われる宴である。風俗歌は、悠紀や主基の国の風俗として奉られた歌である。

 初句「あかねさす」は、「日」や「朝日」にかかる枕詞である。
 二句「朝日の里の」は、近江国の朝日郷の、の意である。枕詞に導かれて、地名が明るく示される。
 三句「日蔭草」は、ひかげのかずらともいい、神事の際に冠に掛けて飾る蔓草である。「朝日」と「日蔭」を並べ、日の光とその蔭とを取り合わせた言葉の趣向がある。
 四句「豊の明かりの」は、大嘗会の最後に行われる豊明の節会の、の意である。「明かり」の語が「朝日」「日蔭」と響き合う。
 結句「かざしなるべし」は、かざしとなるにちがいない、の意で、「べし」は確信のある推量を表す。悠紀の国の草が節会を飾るとして、その国の産物を祝いの場に結び付ける。前歌の第七百四十七首が主基の国を詠んだのに対し、この歌は悠紀の国を詠み、東西の二国が並ぶ。

ひかげぐさ:ひかげのかずら。神事の際に冠に掛けて飾る蔓草
とよのあかり:大嘗会や新嘗祭の最後に行われる宴。豊明の節会
かざし:髪や冠に挿して飾る草花
ゆき:大嘗会で新穀を献じる二国のうち、東の国
作者
大中臣輔親
出典
新古今和歌集
その他の歌